平成の玉音放送
33歳のときに初めてエッセイを掲載させてもらってから、24年になります。
不定期ながら、思うことを自由に書かせてくれる「三重ふるさと新聞」は、大きな新聞社の傘下でなく、
独立して独自の視座から情報発信できる、全国でも数少ない優良誌と言えましょうか。
三重県の中部のみの配布ですが、全国に郵送もしてもらえますから購読してみてください。
「新聞で信じていいのは日付だけ」
などと新聞に書くエッセイストもいないでしょうが、
それをそのまま掲載する三重ふるさと新聞もすごいですね。
今日の紙面トップに掲載されている私のエッセイです。
「平成の玉音放送
赤塚高仁
天皇陛下が、天皇の地位をご存命中に退かれる「生前退位」を強く望んでおられると、新聞は一面に大きく書き、TVも繰り返しそう報道しています。
私には何が本当のことなのかはわかりません。
ただ、私がわかっているのは、日本の天皇は他のどの国の王様とも違うということです。
天皇は、日本国の象徴です。
象徴とは実体のないものを表すものです。
「桜は春の象徴です」
「ニキビは青春のシンボルです」
春も、青春も触ることができないけれど、桜や、ニキビは触れます。
天皇は日本国の象徴なのです。
富士山を見ると、日本を感じるのは、富士山が日本の象徴だからでしょう。
天皇が日本の象徴だということは、天皇の御姿が日本を表しているということです。
天皇は権力者でも支配者でも地位でも名誉でもありません。
天皇には苗字も、職業選択の自由も、選挙権も被選挙権も、結婚の自由も、離婚の自由もありません。
ただ、世界の平和、日本の平安と国民一人ひとりの幸せを祈る大祭司が天皇なのです。
天皇の仕事はただ一つ、「祈り」です。
このことを改めて国民一人ひとりが認識するときがきたのです。
平成28年8月8日15時、天皇陛下が国民に直接語りかけられました。
我が国建国以来、天皇みずから国民に語りかけられたことは三度しかありません。
天皇のお身体のことは「玉体」、御声のことを「玉音」と言います。
この「玉音放送」は、1945年8月15日の昭和天皇による「終戦の詔書」。
2011年3月16日東日本大震災に関しての御言葉、そしてこの度の三度です。
大日本帝国憲法が生まれた明治22年よりもはるか悠久の昔から我が国は、「天皇ノ治ラス国」でした。
憲法などという他国の常識をはるかに超越した、世界で最も古くから続く君主国家が我が国日本です。
「シラス」とは、「知る」の丁寧語です。
国民の心に寄り添い、全てをお知りになって徳を持って治めるのがシラスです。
その反対に、日本以外の多くの国々は、「ウシハク」統治の世界です。
権力や武力で支配することを「ウシハク」と呼ぶと古事記に書かれています。
イザナギから誕生した天地の理の人格神である天照大神が、天の神々と相談され、
無限に広がるまことの豊かさを地上に実現する国の具現化を目指すため、孫のニニギノミコトを地上に遣わしました。
これが、我がヤマトの神話のクライマックス「天孫降臨」です。
このとき、天照大神はニニギに、三種の神器を授けるとともにこう仰せられました。
「豊葦原の千五百秋の瑞穂の國は、これ吾が子孫の王たるべき地なり。爾皇孫、就きて治らせ。行矣。寶祚の隆えまさむこと、當に天壤と窮まりなかるべし」
これが天壌無窮の神勅です。
そしてこれこそが、日本建国の本願であり、日本の背骨とも言えましょうか。
いまの言葉に直すと、
「豊かな葦原で秋になると稲穂がたくさん稔る瑞穂の國は私の子孫がシラス国である。なんじ皇孫よ、これから行って治めなさい。元気で行きなさい。
天つ神の靈統を継ぐ皇孫と国民が和をもって進んでゆくかぎり、天地と共に永遠に栄えてゆくであろう」という、アマテラスの約束であり、祈りなのです。
かつて、三島由紀夫は、日本人にとって何よりも大切なものは、三種の神器と天壌無窮の神勅だと言っています。
まさに日本という国は、天つ神の子孫を中心とした神の国であることがわかります。
そして、今から二千六百七十六年前のこと、初代、神武天皇は、すべての国民が幸せに暮らし、豊かに生きてゆける高天原のような国を願って日本国を建国されたのです。
天孫降臨の時にさずけられた三種の神器は、この初代神武天皇から今上天皇まで百二十五代、皇位の印としていまも継承されています。
地球上に二百近くある世界の国々の中で、たったひとつだけ神話が途切れずにいまもなお生き続けている奇跡の国、「日本」。
原爆を落とされても、戦争に負けても、地震が起きても、津波が来ても、原発が爆発しても、日本は復興します。
しかし、万系一世の天皇がなくなる時、日本は終わるのです。
このたび陛下はこう仰いました。
「天皇の行為を代行する摂政を置くことも考えられます。
しかし、この場合も、天皇が十分にその立場に求められる務めを果たせぬまま、生涯の終わりに至るまで天皇であり続けることに変わりはありません」
陛下の御言葉を深く受け止め、天皇の大御宝としての国民のあり方を見直す時が来ました。
伊勢が世界の聖地となり、日本が世界の灯明台となるときがきているのですから。」
本当のことを知りたいという、切なる願いを抱き、
日本に生まれた感謝を今日一日、魂の底から天に捧げたいと思わされる朝です。