稲葉統也さん
「聖なる約束」・・・
この本のタイトルが、どうしてこんな風になったのかはよく思い出せないのですが、
きっとこの名前が風に乗って広く届いてゆくことでしょう。
出版記念講演会、600人近い魂の兄弟姉妹に集っていただき、創世記のステンドグラスの前でメッセージを伝えることができたことを嬉しく思います。
なつかしい人たちの顔に、これまで歩いてきた人生を改めてしみじみ噛みしめました。
その中に、ひときわ輝く懐かしい顔、稲葉さんがいました。
静岡から新幹線に乗って来てくださった稲葉統也さんとは7年ぶりの再会でした。
今は、静岡市内の自宅で整体を仕事としておられます。
稲葉さんは、元気な人で商売人として成功していました。
お金もたくさん手に入り、高級車を乗り回し、この世の目に見える豊かさを次々と叶えていた矢先に、
突然病に襲われ、失明してしまいます。
絶望の中で、死ぬことばかり考えていたそうです。
生きていても希望などないから。
暗闇しかないから。
そんな稲葉さんの心に光が射したのは、家族の愛でした。
家族という宝に気づき、目に見えるものよりも大切な、見えない宝の光で満たされてゆきます。
自分に死んで、家族のために生きるために立ちあがった稲葉さんは、体を鍛え始めます。
そして、昔に励んでいた柔道でパラリンピックに出場。
5位となります。
その後、自転車競技、陸上と自らの能力の限界に挑み、多くの人々を勇気づけてゆくのです。
そんなときに彼に出会い、彼は私のログハウスに訪ねてきました。
そこに居合わせたのが、山元加津子さんであり、入江ふみこ監督でした。
入江ふーちゃんは、「1/4の奇蹟」に稲葉さんをとりあげ、稲葉さんは全国に、世界に知られてゆきました。
7年前、稲葉さんは表舞台から姿を消し、整体師としての生活に埋没していったのです。
整体院の看板は、古民家の縮小版の建物を作り、「稲葉整体院」と矢印を屋根に乗せました。
津の赤塚建設で作って、静岡までトラックで運びました。
「赤塚さん、本を出すんですって? 京都、僕も行きます」
電話をもらったとき、どんなに嬉しかったことでしょう。
この講演会が成功すると確信した瞬間でもありました。
稲葉さんは、目に見えるモノを信じません、心に光が射すことを観る人だからです。
稲葉さんが来てくれるということは、そこに光があるということです。
講演会の後、稲葉さんとゆっくり話しました。
翌朝も、同じホテルで食事しながらたくさん話しました。
「赤塚さん、この聖なる約束ってタイトルを聞いたとき、僕はどうしても赤塚さんに会いたいと思いました。
そして、会って、僕の聖なる約束を聞いてもらおうと思ったんです。
7年間治療院をしてきて、治る人と治らない人の違いがわかりました。
どれだけ治療家が一所懸命がんばっても、本人が自分自身を信じなければ治らないのです。
僕は、もっと患者さんに強い影響力を与える人になりたい。
だから、僕自身が思いこみを取り去った人間になって見せようと約束したんです。
7年後東京オリンピックに出ます。
そのとき僕は54歳。
人は、どんどん歳をとってダメになるとみんな決めているけど、そうじゃないってことを見せたいんです。
目が見えなくても、歳をとっても 不可能はないって。
7か月前から身体を造り始めました。
7年間運動してませんでしたからね」
目の前には、ニコニコ笑いながら話す、逞しい肉体のアスリート稲葉統也さんが復活していました。
陸上、やり投げ、投的で世界に挑戦するそうです。
「聖なる約束の日に、僕もここに参加できて嬉しいです」
そんな稲葉さんに会えて嬉しいです。
一人ひとりが約束を果たして、たくさんのエピソードを抱え神様の元に帰るその日まで、
にこにこ顔で命がけで生きていきましょうね。
それでは、私も現場に行かせていただきます。