軍団とファミリー
「 よし、ちょっと軍団をみんな呼べ」
真夜中、日付が変わった頃、たけしさんから招集命令が出た。
「昼間、フライデーといろいろあってよ。話つけようと電話したら、話があるなら来い!って言うからいまから行くぞ」
たけしさんは、パパラッチには比較的寛大で、「オレも一介の芸能人なんだから、スキャンダルでもなんでも取材させてやるよ。堂々といらっしゃい」
と、ギャグ混じりに話していたが、当時たけしさんとつきあいのあったおネエちゃんが、フライデーの記者の強引な取材で腕をつかまれ軽い怪我をした。
いくらなんでも素人相手にケガまでさせるような無茶苦茶な取材の仕方はないだろうと、フライデー編集部に電話すると、まっとうに取り合ってくれなかった。
それで業を煮やしたたけしさんは、軍団を集めて直接抗議に行くと決めたのだった。
「話し合いだからよ、お前ら、絶対に手ぇだすんじゃねーぞ」
タカと義太夫は、たけしさんのすぐ後ろにいた。
「もしものことがあって、殿が殴られるのも困るし、殴るのはもっとマズいから、もし何かあったら俺ら二人で抑えよう」
・・・結局乱闘になって、大塚警察署から駆けつけた刑事らがたけしさんと軍団を現行犯で逮捕した。
たけしさんは警官に「みんなオレの言うこと聞いてついてきただけだから、だから、手錠はいらないですよね?」と言ってくれた。
取調室に行く途中の大塚署の暗い廊下で、たけしさんはちょっと振り返るようにして俺らの方をチラッと見ると、ボソッと小声で言った。
「悪かったな。お前らには感謝してるぜ・・・」
後にも先にもたけしさんから感謝してるなんて言われたのは、そのときだけだ。
そして、たけしさんは続けて、
「お前らのことは一生、面倒見るからよ。
オレ、土方してでも、お前らを絶対喰わせるからな」
胸がジーンとなった。その言葉だけで俺らは全員、
「もう、どうなってもいい」 本気でそう思った。
縁あって出会い、人は人と交わり、時にはぶつかり傷つきながら磨かれていきます。
たけし軍団のこの本を読みながら、人の世で何よりも大切な宝とは何かを思わされるのです。
きっと、2000年前にイスラエルで生きたイエスという親分も12人の弟子たちも、素晴らしい宝のような人生だったにちがいありません。
ワシも澤田ファミリーと出会い、想像を超えた運命の扉が開かれたこと、魂の底から喜びが湧いてなりません。
夜中のCoCo壱番屋5辛のカレーと、時どきチョット痛いのも喜び始めてることに驚く今夜のワシであります。
殿が部屋に引き上げられた、関のビジネスホテルの一室にて、人生の味わい深さをしみじみかみしめつつ