赤塚高仁ブログ

夏が来ると思い出す

2013.08.03

1988年7月23日糸川英夫先生とアンさんにお出逢いをいただきました。

ワシにとっての人生の記念日です。

糸川博士の家での勉強会でしたが、テキストは旧約聖書、その日のテーマは「モーゼに学ぶリーダーの退き際」でした。

「聖書は、宗教の本ではない。人生を学ぶ最高の書物だ。」

と糸川先生は教えてくださいました。

泊めて頂いたものの、緊張と興奮で明け方目が覚めるとアンさんが玄関で私たちの靴を磨いてくださっていました。

そのときの景色を、私はきのうのことのように憶えています。

 

「日本が危ない」、と日本民族に警告を発し続けておられた愛国者糸川先生が人生最後のパートナーとして選ばれたのがイスラエルでした。

一度滅びた国が、約二千年後再び建国されたという人類史上稀有な奇跡。

糸川先生は、ユダヤの民にある民族のアイデンティティこそ、今の日本民族が学ばねばならないことだと考え、そして実践し「日本テクニオン協会」を創始されたのでした。

偉大な預言者であった糸川先生が予測されたように、日本は今危機的状況に陥っています。

今、糸川先生を仰ぐとき、志半ばで斃れた先生を、無限に悲しみます。

1990年に出された糸川先生の「日本創成論」にはこう書かれています。

「汝、自らを愛するがごとく、隣り人を愛せよ。」が万人に共通する普遍的な真理であることは、すぐにわかることだ。

日本人は西洋人が発見した科学の原理を導入するさい、哲学・宗教的な部分をそっくり落としてしまった。日本人がその原理を応用し作った技術は、もっぱら経済と結びついてしまった。

その経済も、哲学・宗教がともなっていないため、欲望に歯止めがかからない。

いい加減に、日本人は自分が奴隷状態に陥っているのだということに気づいてもいいのではないか。

奴隷のくびきから脱するためには、理念とビジョンがなければならないとは、モーゼの教えるところである。

理念は簡単だ。万人が幸せになることである。

したがって、われわれは思索し、対話して行動の規範となるものを早急にまとめ上げていかなければならないだろう。

西洋の聖書に根差したものも参考にしつつ、今こそこれが日本のモラルだと世界に胸を張って主張できるものを体系化し、確立する必要がある。

これこそが、新たなる日本を創る「日本創成」なのである。」

 糸川先生の目的は、先生個人のものでなく、私ども日本人、もしくはアジア人、さらにいえば人類のだれもに、共通する志というものでした。

 

 夏が来ると糸川先生と出会ったことをありありと、手触りがするほどに鮮やかに思い出すのです。

子弟でも、夫婦でも、親子でも、真実の対話は、死に別れてから始まるのかも知れません。

 

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