父の魂
昔、少年ジャンプに「父の魂」という漫画が連載されてました。
貝塚ひろしさんの作だったでしょうか。
ワシが小学校4年生頃だったから、今から45年ほどまえのことですね。
バット職人のお父さんが作ってくれたバットで、野球選手になってゆく話だったと思いますが、
そのバットには鈴が付いていて、チリンチリンと鳴っているのが印象的でした。
ちょうどその頃、草野球が流行っていて友達がいい道具をもっていると羨ましかったのです。
ワシもバットが欲しいとねだると、
「なんでも買ったらいいちゅうもんとちゃうで!」と父に叱られました。
「よその家がうらやましかったら、よその子になれ!」と
「よその子ばっかほめるんやったら、その子の親になれ」と口ごたえするワシは、しょっちゅうぶん殴られましたけど。
そんな父が、夜なべでなんか作ってました。
それは、材木を削りだして、銀色のペンキで塗ったちょっといびつなバットでした。
友達がもってるスマートなバットではないけれど、手作りのちょっとイカした世界で一つだけのバットでした。
大事に使ってました。
あるとき友達がそのバットを貸してといい、打席で折ってしまいました。
喧嘩の嫌いなワシでしたが、その友達に飛びかかって怒ったのでした。
いまもあのバットが、心のどこかにあります。
あの頃の父の歳をとっくに通り過ぎてしまいましたが、一本のバットを削りだしてくれている父の姿を思うと胸が熱くなります。
父は、ずっと生きているものだと思っていましたが、7年前に天に帰ったきりもう姿は見えません。
それでも不思議に死んでも生きて働いているのを感じます。
命は終わらないのでしょうね。
この間は、夢ではっきりみえたから懐かしかったです。
いつの間にか時は過ぎて、ワシの娘が今日は27回目の誕生日を迎えます。
父にしたことを娘が返してくれて、父の気持ちが今にワシに感じさせてくれます。
つながっている永遠の命の中で、わずか数十年と言う刹那。
いかに機嫌よい時を過ごし続けることができるのか、 笑っていましょう・・・いつも静かに涼やかに