木村政彦はなぜ力道山を殺さなかったのか
GWに読んだ本です。
800ページ 二段組み、途方もないボリュームのノンフィクションです。
講道館7段、「木村の前に木村なし、木村のあとに木村なし」と言われた無敵の柔道家、木村政彦。
力道山との不可解な戦いに敗れ、表舞台から姿を消す木村選手。
熊本出身の無敗の柔道家、 こんな凄い人が日本にいたのだと知らされ驚きました。
しかし、今日までほとんど知られることがありませんでした。
どうしてでしょう、こんなにすごい日本人がいたのに。
グレイシー柔術も、ヘーシンクも全く歯が立たなかったほどの無敵の天才柔道家の真実です。
かたや、日本人で知らない人のいないプロレスの英雄、力道山。
彼は、北朝鮮出身という秘密を抱えたまま、日本人のヒーローとなりました。
相撲界で関脇まで昇ったけれど、日本の国技から飛び出して新しい場所を創りだしたのです。。
暴漢にさされ、30代で死んでゆきますが、彼は伝説となり、
長崎の原爆のシンボルの像のモデルとなったり、池上本門寺の銅像となったり忘れられない存在です。
光と影
この本の中に、人間一人ひとりの姿が見えるようです。
木村政彦さんは、実に多くの人に愛され、悪く言う人がほとんどいないのです。
弟子を褒めるときは、人前で褒め
絶対に人前では叱らなかったそうです。
人を傷つけることを決してしない、優しさの人です。
そっと呼び出し、誰にもわからないようにその人を諭しました。
弟子の誰もが木村七段を尊敬し、愛しました。
ところが力道山は、ところかまわず感情のままに怒鳴り、叱り倒しました。
頭が割れるまで殴り倒したといわれます。
その人の人格まで否定するほどの、ひどい言葉のナイフを投げつけました。
応援した人も、次々と力道山を去ってゆきます。
でも、人前で死ぬまでヒーローを演じ続けました。
この世の成功を力道山は手に入れたのかも知れません。
木村政彦さんは、この世ではうまくいかなかったようです。
不器用な武道家なのでしょうが、愛されました。
奥さんの結核を治すための高額なストレプトマイシンを買う金を得るための八百長。
どちらが正しいのかは、ワシにはわかりません。
でも、強いあこがれの存在の英雄が、実はとんでもない劣等感をもち、弱いものを叩いてエネルギーを奪おうとしていたこと知りました。
人は皆、心の中に闇を隠していることを見せられました。
凄い本ですね。
実に多くのことを、思わせていただいた一冊でした。